[タダノ]イースター島モアイ像 修復プロジェクト

2025/5/4(日) 03:01

株式会社タダノは1988年から1996年にかけて、チリ・イースター島で「モアイ修復プロジェクト」に取り組みました。チリ政府にクレーンを寄贈し、技術者を現地に派遣し、1999年5月に15体のモアイ像がよみがえりました。


イースター島は太平洋に浮かぶ絶海の孤島で、世界遺産にも指定されています。島全体に渡って残された謎の石像「モアイ」が有名です。モアイは10世紀から17世紀の間に造られ、およそ1,000体が存在すると言われていますが、ほとんどが津波や地震、部族間の争いなどによって倒されたままになっていました。

 

1988年11月、日本のテレビ番組でイースター島の知事が「クレーンがあれば、倒れたモアイ像を起こせるのに」と呼びかけ、それをたまたま見ていたタダノの社員が「当社のクレーンが修復に役立つかもしれない」と提案し「モアイ修復プロジェクト」が発足。政府や海軍、考古学者や島民の協力を得て1995年、アフ・トンガリキに15体のモアイ像がよみがえりました。

 

当時、タダノに設置されていた事業開発室がプロジェクトを担うことになりました。代表が駐日チリ大使館を訪問し、協力を申し出るところからはじまり、調査団を現地へ派遣。4年後には「モアイ修復委員会」が設立され、日本側の考古学者とチリ側の考古学者が協議して修復場所を決定し、ついにチリの国立遺跡審議会が修復・再建を正式に許可しました。

 

モアイ像を起こすには、いくつか課題がありました。モアイを起こすクレーンを運ぶ際の、モアイ像を傷つけないための専用治具を開発しなければいけません。それだけではなく、完成した治具を使用してモアイと同質の石で、かつ形状も寸法も同じ模造を作らなければいけませんでした。そのため、香川県庵治町の「庵治石」を使ってモアイ像の模刻を作成し、タダノの工場でテストを実施・検証しました。

 

1992年9月、クレーン、修復資材、発掘機材などをイースター島に搬入し、技術者を派遣して工事・クレーン操作にあたりました。修復に使用した50t吊りクレーン1台はチリ政府に寄贈されました。また、修復作業を通じて現地の人たちへクレーン操作、メンテナンス方法、玉掛け方法などの技術を4ヶ月間にわたり指導しました。その後、2006年に2台目となる60tクレーンを、また株式会社タダノの創業100 周年にあたる2019年には、3台目となる100tクレーンをチリ政府へ寄贈しました。

 

 

「世界から最高品質と称される庵治石とは」

香川県の北東部に位置する庵治地方にだけ産する花崗岩で、「花崗岩のダイヤモンド」と呼ばれています。キメの細かさ、光沢・重量感と三位一体となった風格は、その昔より最高級石材と讃えられています。

また、構成鉱物のひとつひとつの結晶が極めて小さく結合が緻密なため、他の地域の花崗岩と比較しても硬いことが特徴の一つです。水晶と同じ7度という硬度は、ノミなどの道具を当てた時も石が崩れることなく、逆に、研磨したように鮮やかな石本来の色合いになります。また、細やかな細工も可能です。水を含みにくいので、風化・変質にも強く、幾世代にもわたり掘られたものが崩れたり変色しにくく、艶もなくなりません。

山から採掘した原石にはキズがあります。それは加工の際にできたキズではなく、石が石になる過程の中でできたもの。実は庵治石はキズが多く、色合わせ・模様合わせが困難なのです。そのため原石から製品になるのは、ほんの数%。このように厳選された庵治石は代々受け継がれる墓石として最も適していると言えます。